読書2008_歴史

大君の通貨

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫)

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫)

幕末の通貨を巡る攻防についての小説です。小説ですので、史実と創作が入り交じっていますが、話の骨組みの部分は史実でしょう。
金貨対銀貨の交換レートが日本と海外で違っていたことによる金の流出が何故起こったのか、日本の水野忠徳、アメリカのハリス、イギリスのオールコックと行った人物を中心に、非常に説得力のある形でまとめられており、オススメです。
以下、要点だけ抜き出してみますので、興味を持たれたら是非読んでみてください。。

  • 海外では金貨、銀貨の価値は地金の価値と等しかった。
  • 日本では銀貨に刻印を打つことにより、地金の3倍の価値を与えていた。つまり、銀貨は信用によって価値を高められていた。
    • 相対的に、金貨の銀貨に対する価値は1/3になっていた。
    • これは、当時の世界では考えられないことであったが、幕府が銀の産出を独占し、かつ外国との交易が限られているという特殊な状況下で可能となっていた。
  • 英米の外交団は、ドル銀貨と一分銀を重量に従った交換レートを主張し、それを押し通した。
  • その結果、日本で安く仕入れ、海外で高く売りさばくことが可能になり、大量の金が日本から流出した。
  • 水野忠徳はこの仕組みを承知しており、何とか防ごうとしたが果たせなかった。
  • ハリスはそれを知っていて私的な殖財を行った。
  • オールコックは後になってそれに気付き、その著作でハリスを告発した。